過敏性腸症候群と腸内細菌関連の治療法

  海野竜也 工学博士

よくテレビのシーンで緊張するとお腹を下しトイレに駆け込むシーンが見られます。全ての人が緊張したりストレスで下痢をするわけではありません。これは過敏性腸症候群という腸の病気です。病状が多様でして、ある人は下痢すると思えばその反対の便秘を患う人もいます。治療には抗生剤やプロバイオティクス、または食事療法などが用いられていますが原因や症状が多様なため万能な治療法は確立していません。

過敏性腸症候群とは大腸や小腸に異常が見当たらないのにも関わらず便秘や下痢、お腹にガスが溜まって痛みがあるなどの症状があり、多くの場合、吐き気を伴う重い病気です。人口の約10%が過敏性腸症候群を患っていると考えられてまして、一般的に女性の方が男性よりも過敏性腸症候群を患う傾向が強いと言われています。
過敏性腸症候群の原因の一つにはストレスが挙げられていて、脳が受けたストレスが腸の蠕動運動に影響を与え、便秘や下痢を引き起こすと思われています。ストレス以外では腸が手術により物理的なショックを受けた場合などがあります。

過敏性腸症候群の患者の腸内細菌叢は健常者の腸内細菌叢よりも多様性が低く、乳酸菌が少ないことがわかっています。そのため腸内環境を改善することで治療ができるか期待されています。乳酸菌などで知られている善玉菌(プロバイオティクス)や善玉菌のエサとなる食物繊維(プレバイオティクス)、またはその両方(シンバイオティクス)を摂取することで腸内環境を改善することができます。

プロバイオティクスとはご存知の通り乳酸菌やビフィズス菌なのですが約250以上もの善玉菌がプロバイオティクスとして登録されていまして同じ種でも菌株が違うと効果が違っています。というのも細菌の場合、遺伝子が70%以上同じであれば同種とみなされるわけで残りの30%は全く違う遺伝子を持っていてもいいわけですので同じ種だからと言って同じ効果があるとは言えないわけです。

参考までに人とチンパンジーの遺伝子は70%~99%似ていると言われています。比較の方法によって値に差がありますが。それぐらい細菌同士の種とは大雑把なわけです。
善玉菌は腸内環境を弱酸性に変えることで悪玉菌の数を減らしたり、食物繊維を分解して短鎖脂肪酸を腸内で発生することにより腸細胞にエネルギーを供給したり腸を病原菌の侵入から守ってくれたりしています。プロバイオティクスを利用した過敏性腸症候群の治療は最もポピュラーであり、腹痛が軽減したとか、お通じが良くなったとか報告されています。

しかし菌株ごとに見ると効果が有る場合と無い場合が混在しています。また、何種類かの菌株を混ぜた場合などがあり、どの菌株を使うべきなのか分かりかねます。一般的にはビフィズス菌、乳酸菌、それと酵母が効果が有るといわれていますが、効果がないという報告もあります。菌株が同じでも個人の腸内細菌叢が違うと効果が変わってしまうという問題が有ります。
プレバイオティクス(食物繊維)は善玉菌のエサとなり既に腸に住み着いている善玉菌に栄養を与え、活性化します。

しかしながらプレバイオティクスを利用した過敏性腸症候群の治療法はあまり一般化されておらず、少数の研究報告ではありますが効果がないことが報告されています。こう考えられる理由が過敏性腸症候群には小腸内細菌増殖症が含まれていてプレバイオティクスにより小腸内の細菌が増殖してしまう可能性があるためプレバイオティクスはあまり過敏性腸症候群の治療としては用いられていないのかもしれません。

この逆の発想が発酵性の糖類(FODMAP)の摂取を控えることで以上増殖した細菌数を減らすという治療法があります。過敏性腸症候群の腹痛は異常増殖した細菌達がガス(水素やメタンガス)を大量に発生し、お腹が張ってしまうことから来ます。ですのでFODMAPの摂取を減らすことにより細菌達にガスを作らせないわけです。善玉菌は糖類を分解して短鎖脂肪酸というガスを発生するのですが、短鎖脂肪酸は腸細胞に吸収されますので腹痛の原因にはなりません。

この低FODMAP食を用いた治療は短期間では効果が有りますが長期間続けるとカルシウム、ビタミン、亜鉛、鉄分などの栄養素が不足するため危険です。また低FODMAP食を長期間続けると善玉菌まで減ってしまうので腸内環境への影響も懸念されています。低FODMAP食を実践する場合は栄養士や医師の指導の下で行うべきでしょう。また、抗生剤も異常増殖した細菌をへらすので一時的には腸内で発生するガスが減るので腹痛が軽減しますが細菌叢のバランスが崩れるという問題があります。
こうしてみるとプロバイオティクスが3つの治療法の中では最も効果的に見えるのですが、どの菌株を使うべきなのかわからないため今一つ実用性に欠けるところです。個人の腸内細菌叢のタイプに適合性のあるプロバイオティクスの菌株を予想できるアルゴリズムの開発が必要となってきています。アメリカやカナダでは菌株ごとにどのような病気に効果が有るかデータベース化されています。

しかし、このデータベースは果たして私たち日本人にも当てはまるのでしょうか?元となる個人の腸内細菌叢や食べているものが違っているため同じ菌株が同じ効果を発揮できるのか疑わしいところです。プロバイオティクスを治療に用いるには日本人の腸内細菌叢を基にして作られたデータベースが必要となってくるでしょう。

また、最近では植物から抽出されたプレバイオティクスの候補となる物質が毎月のように報告されています。この中には「選択的に」善玉菌だけに分解される食物繊維もあるはずです。FODMAPとは違い水素やメタンガスのもとにはならないので理論的には腸内の善玉菌を増やす最も適した方法となるかもしれません。まだ、課題がたくさん残っている過敏性腸症候群の治療法の開発ですが腸内細菌の研究が進むにつれ新たな解決法が発見されることでしょう。

 

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