薬と腸内細菌

 海野竜也 工学博士

薬には飲み薬,注射,塗り薬などなど有りますがどれも病気の症状を緩和するためには重要です。2020年の1月にNature Communicationsという有名な国際誌に一般的に使われている飲み薬が腸内細菌の数と腸内細菌による代謝にどのような影響を与えるのかを調査した報告が掲載されました。この調査には1124人の健常者、454人の炎症性腸疾患を持っている人、305人の過敏性腸症候群を患っている方達が対象となっています。一般的に炎症性腸疾患には抗炎症薬、過敏性腸症候群には抗うつ剤や便秘薬が処方されています。

他にも被験者が服用していた薬には胃酸過多を抑えるプロトンポンプ阻害薬、殺菌を目的とした抗生剤、血糖を下げるメトホルミン、そしてビタミン剤までも調査の対象となっていました。どの薬を飲めばどの腸内細菌が増減し、結果として腸の代謝にどのような影響を与えるのか。手法はお馴染みの被験者の糞便から抽出したDNAを基に遺伝子解析をしたものです。今回の調査では被験者たちが服用していた薬の種類は41種類、そのうち19種が腸内細菌に関与することがわかりました。その中でも特にプロトンポンプ阻害薬、抗生剤、メトホルミン、便秘薬の4タイプの薬が腸内細菌に与える影響が大きかったそうです。一つずつ順に説明していきます。

まずはプロトンポンプ阻害薬からです。プロトンポンプ阻害薬とは胃酸を抑えるための薬です。胃酸にはご存知の通り殺菌作用がありまして口から侵入した菌を殺してくれます。プロトンポンプ阻害薬を服用することで、予想していた通り、腸内に口腔微生物が増加してしまいました。これは小腸内細菌異常増殖症にも関係していますが今回は糞便にも口腔微生物の増加が確認されました。口腔微生物とは炭水化物を分解する能力に富んでおり腸内で糖分を沢山作り出してしまうため血糖値の上昇や肥満の原因となると予測できます。現にプロトンポンプ阻害薬を使用して体重が増えたという報告は出ています。

次は抗生剤です。抗生剤は細菌を殺すための薬で腸内細菌に影響を与えるということは予想されています。特に顕著であったのがビフィズス菌の減少です。ビフィズス菌以外の菌への影響は述べられておらず、腸内細菌の代謝にも影響がなかったと報告されています。そもそも今回の被験者の中には抗生剤を服用していた人が少なかったという事が追記されていました。別の研究では成人の場合は抗生剤を長期服用しても時間が経てば腸内細菌叢は元どおりに戻ると報告されています。以前、脳腸相関のトピックで書きましたが乳児の抗生剤の服用は腸内細菌叢の形成過程を妨げるので成人の場合とは別ですので誤解しないで欲しいと思います。

糖尿病の薬として使われているメトホルミンは短鎖脂肪酸を産生する細菌やアッカーマンシアという粘液を餌とする腸内細菌を増やす事がわかっています。アッカーマンシアは腸細胞を保護している粘液の中に入り込み粘液を分解してアッカーマンシアの代謝物が周辺の短鎖脂肪酸産出菌を腸細胞の近くに引き寄せます。引き寄せられた細菌たちは腸細胞の近くで短鎖脂肪酸を産出し、短鎖脂肪酸は腸細胞に取り込まれ腸が活性化します。結果として血糖を下げ、肥満を予防できるわけです。メトホルミンは腸内細菌叢自体を改善してれているので糖尿病以外の治療薬としても注目を浴びています。例えば血圧を下げる、アンチエイジング、抗がん作用、神経保護作用効果がなどが期待されています。

便秘薬も腸内細菌に影響を与えるという結果が出ましたが、便秘薬の場合は直接細菌に影響を与えるのではなく私たちの神経系が刺激される事で間接的に腸内細菌が影響を受けるという事がわかりました。例えば胆嚢から胆汁酸が分泌されて肉を消化するのですが残りの胆汁酸は大腸に行き浸透圧を引き起こし大腸内の水分を増やします。また、神経が刺激される事で大腸の蠕動運動が起こり快便を誘発します。これらの事によりAlistipesやBacteroidesという細菌が増える事がわかりました。

これらの4タイプの他にも経口ステロイドが腸内のメタン生成菌を増やすという事がわかりました。ステロイド薬は免疫を調節し炎症やアレルギーを抑える効果があり,関節リウマチ,気管支喘息, 肺炎,皮膚病,アレルギー疾患など 様々な病気の治療薬として使われています。腸内で産出されるメタンガスは他の腸内細菌の炭水化物分解能力を活性化する事が報告されていまして、プロトンポンプ阻害薬の時と同様に腸内細菌による血糖上昇や肥満を誘発すると予測できます。また、不思議な事に抗生剤を飲まなくても一般の薬を飲むだけで腸内に抗生剤耐性菌が増えるという事が分かりました。細菌たちの中には多剤排出ポンプという機能を持った細菌がいまして、その名の通り自分の中に入ってきた異物を吐き出すかのように排出します。こういった細菌には抗生剤が効きません。薬を服用する事により多剤排出ポンプの機能を持った細菌が選択的に生き残るためか抗生剤耐性菌が増えたと予想されます。

薬を飲めば副作用があることはわかっていましたがその副作用の原因の一つが腸内細菌たちの変化である事が示唆される研究結果となりました。プロトンポンプ阻害薬やステロイドの副作用で太る理由は既にわかっていた事ですがその理由が口腔細菌やメタン生成菌の増加であるということは意外でした。また、糖尿病の薬であるメトホルミンは腸内細菌を利用して代謝を上げる効果がある事が分かり、メトホルミンが効く人と効かない人を腸内細菌叢の解析により見分けられるのではないかと推測されます。メトホルミンには乳酸アシドーシスという時には死に至る副作用があるのですが、この副作用と腸内細菌叢の関係を明らかにする事でひょっとしたら未然に防ぐ事ができるのではないかと期待しています。特定の病状の緩和のためだけに飲んでいた薬ですが実は私たちの腸内細菌に影響を与え、良くも悪くも私たちの代謝に変化が起きるという事がわかりました。薬の処方も腸内細菌叢を知った上で行うべきなのかもしれませんね。

 

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