腸内細菌と断食の研究

海野竜也 工学博士

断食が体に良いということは最近になってよく聞く話です。また、プチ断食なんて言葉も聞きます。断食とは修行僧のような宗教家には馴染みのある言葉ですよね。プチ断食は丸一日食べないのではなく16時間胃や腸を休ませることを目的としての断食です。どちらも経験者によるとお通じも良くなるし体が軽くなった感じがするし、「デトックス」効果があると言われています。

この体に良いと認められている「断食」、果たして腸内細菌とはどのような関係があるのでしょうか。参考までに細菌の成長速度は30分で2倍になります。もちろんこれは試験官の中で十分な栄養と適切な温度で育てた場合です。細菌の成長速度は人よりも数倍早いわけでして栄養の有無によりある細菌は死ぬ細菌もいるし腸内に残された養分で粘り強く生き抜く細菌もいます。

断食により腸内で細菌達が食べられるものが限られ細菌数が大幅に減少することが予測されます。ハムスターの場合だと冬眠中は虫垂内の細菌数が90%以上減少すると報告されています。

2019年の10月にドイツのブッチンガーウィルヘルミクリニックで「ブッチンガー断食」という治療法で腸内細菌がどのように変わるのか報告されました。ブッチンガーとはドイツのお医者さんであるオットーブッチンガーさんの名前から由来していましてブッチンガーさん本人もリュウマチを断食で治療した経験があるそうです。

ブッチンガー断食とは一日に水またはハーブティーを合わせて2〜3リットル、蜂蜜20グラム、搾りたてのフルーツジュース250ml(昼食)、野菜スープ250ml(夕食)で構成されていて結構ハードな食事療法です。また、ブッチンガー断食には下剤や浣腸を使って2日に一回、腸の内容物を空っぽにします。これを10日間行います。今回の研究では15人の健常者を対象に行われました。もちろん、このハードな断食プログラム、みなさん、5〜7キロ痩せました。血圧も断食前より下がっています。

そして多くの人が断食終了後に気分や体調の改善を報告しています。しかし、断食をやめて3ヶ月後には体重も血圧も元に戻っていました。断食中の血液の成分を調べると断食中は血糖値やインスリンの量がかなり低下しましたが断食をやめた3ヶ月後には元に戻ります。血中コレステロールや脂肪酸も断食中には低下します。食べてないのだから当たり前ですね。

しかし、尿中のアセト酢酸は断食中に増え、断食後に下がります。アセト酢酸とはコレステロールや脂肪酸を分解した後に残ったものでして、断食中には糖の代謝ではなく脂肪酸やコレステロールの分解によりエネルギーを得ている状態であったことが考えられます。では腸内細菌はどのように変わって行ったのでしょうか。

もともと、腸内細菌叢とは十人十色でして全ての人が断食により同じ反応をするわけではありません。断食により全ての人の腸内細菌も多種多様に変化がありました。全体的な傾向としてはバクテロイデーテス門が増えてフィルミクテス門が減ることが観察されます。

この二つの門の比率は肥満との相関が何度も報告されていまして、断食により腸内細菌叢が肥満型から痩せ型に移行することが確認されました。しかし、断食が終わって3ヶ月経つと元に戻ってしまいました。不思議なことに腸内細菌の作る健康促進物質である短鎖脂肪酸(特に酪酸)が断食中には変化がなかったのですが3ヶ月後には約2倍くらいに増えていることがわかりました。

腸内細菌叢は元に戻ってしまったのに腸内細菌の代謝物である健康促進物質である酪酸が2倍になったということは不思議です。私の推測ではありますが断食中による代謝の変化が腸内細菌の活動に変化を与えていたのではないかと推測しております。

細菌の活動とは環境に左右されまして飢餓状態の細菌は自身の代謝パターンを変えることで環境に適合しようとします。栄養分が空になった腸内で別の遺伝子を発現することで生き残ろうとします。

これが結果として細菌叢が変わらなくても細菌が作り出す代謝物に影響を与えたのではないかと思います。少し専門的な話になってしまいますがこうした細菌の活動の変化はDNAの分析では測ることができなくRNAの分析をしなくてはいけません。RNAの解析はDNAに比べて費用がかかってしまうため大きなプロジェクトでない限りあまり使われていないのが現実です。

そういった面では今回の研究結果は非常に興味深く細菌の生態的変化だけではなく活動パターンの変化の必要性を示唆するエビデンスではないかと思います。免疫系の変化は断食中はありませんでしたが食事を再開するとすぐに免疫が強化されたことが確認されています。どうやら断食の効果は断食中よりも断食後の方に現れるようです。

断食による腸内細菌の変化は冬眠をする動物にも同じ傾向が報告されています。また、同じことが1日の食事のサイクルでも確認されています。例えばマウスを使った実験ですが餌を食べる回数が増える夜にはフィルミクテス門が増え、あまり食べない昼間にはバクテロイデーテス門が増えるということがわかっています。

今回は健常者を対象にした研究ですので断食の治療効果を調べることはできませんでした。一般にメタボの方や消化器系、免疫系の持病のある方は腸内細菌の多様性に乏しいのですが、断食により回復するのかどうかが今後の研究のテーマとなるでしょう。

ちなみにこの研究、最初は58人を対象に始まったらしいですのが実際にデータとして使われているのは15人でした。この断食を10日間するということが簡単ではなかったということでしょうか。食べ過ぎなければ断食する必要もないと思いますが。まだ完全には解明されていませんが、食べ過ぎた後は断食で腸内細菌の働きをリセットしましょう。

 

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